UTILITY MODEL EXAMINATION

実用新案は無審査?
登録される条件と注意点を弁理士が解説

「無審査」は、何も確認されずに登録されるという意味ではありません。審査されない項目と、登録前に確認される項目を分けて説明します。

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最初に結論

実用新案は、登録前に新規性・進歩性などの実体審査を行わない制度です。一方で、書類の形式を確認する方式審査と、保護対象や記載の明確性などを確認する基礎的要件の審査があります。したがって、「出願すれば必ず登録される」「登録された権利は有効性が保証されている」という意味ではありません。

「無審査」の正確な意味

実用新案で省略されるのは、主に新規性・進歩性などについての実体審査です。形式や基礎的要件まで確認されないわけではありません。

登録前に実体審査しない

新規性・進歩性など

同じ考案がすでに公開されていないか、従来技術から容易に考案できないかなどは、登録前には判断されません。

一方で
登録前に確認する

方式・基礎的要件

提出書類や料金に不備がないか、物品の形状・構造・組合せに関する考案か、記載が著しく不明確でないかなどを確認します。

より正確な表現:「無審査登録」よりも、「新規性・進歩性の実体審査を経ずに登録される」と理解するのが適切です。

登録前に確認されること・されないこと

項目登録前の確認内容
書類の形式・料金確認される願書、明細書、請求の範囲、図面、要約書や、出願料・登録料などの方式を確認します。
保護対象確認される物品の形状・構造・組合せに関する考案であるかを確認します。
公序良俗等確認される公の秩序、善良の風俗、公衆衛生を害するおそれがある考案でないかを確認します。
考案の単一性確認される一つの出願に含める考案が所定の技術的関係を満たすかを確認します。
記載の基礎的要件確認される必要事項がなく、または記載が著しく不明確な状態でないかを確認します。
新規性実体審査しない出願前に同じ考案が公知・公開になっていないかを登録前には判断しません。
進歩性実体審査しない従来技術から極めて容易に考案できるかを登録前には判断しません。
先願との関係等実体審査しない権利の有効性に関わる先行出願等との関係を登録前に網羅的には判断しません。
基礎的要件を満たさない場合:補正命令を受けることがあります。期間内に適切な補正をしない場合、出願が却下される可能性があります。

実用新案が比較的早く登録される理由

1

出願

必要書類と第1〜3年分の登録料を提出・納付します。

2

方式審査

書類形式、必要事項、料金などを確認します。

3

基礎的要件の審査

保護対象や著しい記載不備などを確認します。

4

設定登録

要件を満たせば、一般に出願から約2〜3か月で登録されます。

特許との違い:特許では審査請求後に新規性・進歩性などの実体審査が行われます。実用新案はこの段階を登録前に行わないため、早期登録につながります。

「登録されたこと」と「有効性」は別

1

登録番号は付与される

方式と基礎的要件を満たすと設定登録され、実用新案権が発生します。登録公報も発行されます。

2

新規性・進歩性は未判断

登録時点では、先行技術との比較による新規性・進歩性の判断を受けていません。

3

登録後に無効となる可能性がある

先行技術などによって登録要件を満たさないことが判明した場合、無効審判で無効となる可能性があります。

4

権利行使には慎重な検討が必要

相手製品が権利範囲に入るかだけでなく、自分の権利が有効と考えられるかも確認します。

誤解しやすい点:「実用新案登録済」という表示は、特許庁が新規性・進歩性を認めたことを意味しません。表示や営業説明で、審査を経た権利であるかのような誤認を招かないよう注意します。

実用新案技術評価書の役割

実体審査を行わずに登録する制度を補うため、特許庁が新規性・進歩性などに関する客観的な評価を示す制度があります。

誰でも請求できる

出願人・権利者に限らず、第三者も請求できます。出願後または登録後に、必要な時点で請求を検討します。

有効・無効を確定するものではない

評価書は、先行技術文献に基づく公的な判断材料です。裁判や無効審判の結論を法的に確定するものではありません。

権利行使前に重要になる

実用新案権に基づいて差止めなどを行う場合、原則として技術評価書を提示して警告した後でなければ権利行使できません。

評価内容を専門的に検討する

評価の結論だけでなく、引用文献、請求項との関係、補正や訂正の可能性などを確認します。

権利行使のリスク:十分な注意を払わずに警告・権利行使を行い、その後に権利が無効となった場合、相手方に与えた損害の賠償責任が問題になることがあります。

特許の審査との違い

比較項目実用新案特許
登録前の実体審査行わない審査請求後に行う
方式・基礎的要件確認する方式審査等を行う
登録までの速さ一般に約2〜3か月審査状況や応答により長くなる
登録時の新規性・進歩性判断されていない審査を経て判断される
権利行使前の評価書技術評価書の提示・警告が原則必要同様の制度はない
存続期間出願日から10年原則として出願日から20年

※特許でも、登録後に無効となる可能性が完全になくなるわけではありません。

実用新案を安全に活用する5つの手順

  1. 公開前に出願する:展示会、販売、SNS、クラウドファンディングなどの前に準備します。
  2. 先行技術を調査する:同じ構造や近い考案が公開されていないかを確認します。
  3. 請求項と図面を適切に設計する:登録の速さだけでなく、模倣品を想定した権利範囲を検討します。
  4. 登録後の利用目的を決める:登録表示、営業資料、ライセンス、権利行使など、目的に応じて対応します。
  5. 権利行使前に技術評価書を取得・検討する:引用文献と権利の有効性を専門家と確認します。

監修・解説:弁理士 林 崇朗

弁理士登録2003年。知財実務25年以上。実用新案の早期登録という利点だけでなく、先行技術、書類の質、登録後の表示や権利活用まで見据えて出願方針をご提案します。

実用新案の審査に関するよくある質問

実用新案は出願すれば必ず登録されますか?

必ずではありません。方式や基礎的要件に問題がある場合は補正命令を受けることがあり、適切に対応しなければ出願が却下される可能性があります。

登録されれば新しいアイデアだと認められたことになりますか?

なりません。登録前に新規性・進歩性の実体審査が行われないため、登録されたことだけでは、従来にない考案であると認められたことにはなりません。

先行技術調査はしなくてもよいですか?

法定の出願要件として調査結果の提出が必須というわけではありませんが、権利の有効性や出願書類の設計を考えるうえで、出願前の調査をおすすめします。

技術評価書で高い評価なら権利は必ず有効ですか?

必ずとはいえません。評価書は重要な判断材料ですが、有効・無効を最終的に確定するものではありません。引用文献や請求項を含めて検討します。

登録後すぐに模倣品へ警告できますか?

警告や権利行使は慎重に行う必要があります。差止めなどの権利行使には、原則として技術評価書を提示して警告することが必要です。相手製品との対比と権利の有効性も確認します。

審査を受けた権利が必要なら特許を選ぶべきですか?

有力な選択肢です。ただし、対象、公開予定、製品寿命、費用、登録までの期間によって適切な制度は異なります。特許と実用新案を事業目的から比較してください。

参考となる公的情報

本記事は一般的な情報の提供を目的としています。登録可能性、権利の有効性、権利行使の可否は、具体的な考案、先行技術、相手製品などによって異なります。

早く登録するだけでなく、活用できる権利を検討しませんか?

製品の構造、公開予定、先行技術、登録後の利用目的を確認し、実用新案・特許・意匠から適切な方法を整理します。

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