第三者の公表だけでなく、考案者や会社自身の販売・投稿も公開になり得ます。
FILE BEFORE DISCLOSURE
公開・販売前に実用新案を出願すべき理由
展示会・SNS・クラファンの注意点
製品を見せて反応を確かめてから出願しよう――その順番では、登録に必要な「新規性」を失うおそれがあります。
← 実用新案の基礎へ戻る実用新案で保護したい製品は、原則として展示、販売、Web掲載、SNS投稿、動画公開、クラウドファンディング開始より前に出願してください。自分で公開した内容であっても、出願時に新規性が問題になる可能性があります。新規性喪失の例外はありますが、期間・手続・証明が必要な救済制度であり、海外で同じ救済を受けられるとは限りません。最も安全なのは「公開前に出願」です。
公開すると「新規性」を失う可能性がある
実用新案登録の対象となる考案には、新しいことが求められます。出願前に技術内容が公衆に知られる状態になると、その公開内容が先行技術となり、新規性や進歩性を否定する材料になり得ます。
実用新案は実体審査なしで登録されるため、公開済みでも登録証が届く場合があります。
後に技術評価や無効理由を検討すると、出願前公開が問題になることがあります。
公開に当たりやすい6つの行為
製品・試作品を見せる
ブース展示、デモンストレーション、説明パネル、配布資料などから技術内容が理解できる場合があります。撮影禁止でも、公衆が内容を知り得る状態なら注意が必要です。
商品を販売する
店頭販売、EC出品、顧客への納品、サンプル配布などにより、製品を入手・観察・分解できる状態になると公開が問題になります。
写真や動画を投稿する
自社サイト、ブログ、Instagram、X、Facebook、YouTubeなどへの掲載は、閲覧者が少なくても公開に当たる可能性があります。
募集ページを公開する
製品の特徴、内部構造、使用方法、比較画像などを詳しく説明するため、出願前公開のリスクが特に高い場面です。
メディアへ情報提供する
ニュースリリース、記者発表、業界紙への寄稿、コンテスト応募作品の公開なども、技術内容が公表される契機になります。
秘密保持なしで説明する
取引先、製造委託先、投資家などへの説明でも、秘密保持義務がない相手に技術を開示すると公開性が問題になることがあります。
安全な順番は「整理 → 出願 → 公開」
公開予定を確認
展示会、発売日、SNS投稿、クラファン開始日を一覧にします。
守る特徴を整理
従来品との違い、構造、作用、効果、代替案をまとめます。
実用新案を出願
必要書類と図面を整え、特許庁への提出を完了します。
展示・販売を開始
出願番号と出願内容を確認してから、対外公開へ進みます。
新規性喪失の例外は「出願後でもよい制度」ではない
出願前に自ら公開してしまった場合、一定の要件を満たせば、その公開によって新規性を失わなかったものとして扱う例外制度があります。ただし、自動的に適用されるものではありません。
期間内でも手続と証明が必要
原則として、公開日から1年以内に出願し、出願時に例外適用を受ける旨を申し出たうえで、原則として出願日から30日以内に公開事実を証明する書面を提出します。
| 確認項目 | 主な注意点 |
|---|---|
| 公開日 | Web掲載日、販売日、展示日などを特定します。複数回公開した場合は、それぞれの公開を確認します。 |
| 公開内容 | 写真、ページ、動画、配布資料、販売物など、何が公衆に知られたかを保存します。 |
| 公開者 | 権利を受ける者の行為に起因する公開か、第三者による公開かを確認します。 |
| 出願時の手続 | 例外適用を受ける旨の手続を行い、証明書の提出期限を管理します。 |
| 第三者の出願・公開 | 例外は第三者の独自の出願や公開を排除する制度ではありません。先願との関係は別に問題になります。 |
| 海外出願 | 国・地域によってグレースピリオドの有無、期間、要件が異なります。日本の例外が海外で通用するとは限りません。 |
商談・共同開発では秘密保持を先に整える
限られた相手への説明でも、相手が秘密保持義務を負うかによって評価が変わります。出願前に説明が必要なら、開示範囲と秘密管理を設計します。
NDA締結前は概要にとどめる
課題や市場性など、技術の核心を明らかにしない範囲で説明し、詳細資料や試作品はNDA締結後に開示します。
秘密情報を特定する
対象資料、試作品、口頭説明、複製物などが秘密保持の対象になることを明確にし、開示記録を残します。
利用目的と再開示を制限する
評価・製造検討などの目的外利用、第三者への再開示、解析・分解の扱いを契約で整理します。
NDAがあっても早期出願する
情報漏えい、契約解釈、共同開発成果の帰属などのリスクは残ります。NDAは出願の代わりではありません。
すでに公開・販売した場合の対応
- 追加公開を止める:新しい写真、動画、詳細資料の公開をいったん控えます。ただし、既公開の証拠を失わないよう、削除前に記録を保存します。
- 最初の公開日を確認する:投稿履歴、公開ページ、注文記録、展示会資料、メール、写真などから日付を確定します。
- 公開内容を保存する:URLだけでなく、画面、画像、動画、資料、製品仕様など、公開された具体的内容を保存します。
- 公開者と相手を確認する:自社、社員、販売店、取引先、報道機関など、誰が誰に公開したかを整理します。
- 早急に出願可否を検討する:例外適用の期限だけでなく、第三者の出願・公開、海外出願、当初書類の作成期間を考慮します。
公開前チェックリスト
- 展示会・発売・クラウドファンディングなどの公開予定日を確認した
- Webサイト、SNS、動画、プレスリリースの公開を一時停止している
- 従来品との違い、構造、効果、代替案を整理した
- 試作品、設計図、写真、説明資料を出願担当者へ共有した
- 社外説明の前にNDAの要否と開示範囲を確認した
- 特許と実用新案のどちらが事業目的に合うか検討した
- 海外展開の予定を確認した
- 出願完了を確認するまで一般公開しない運用を決めた
監修・解説:弁理士 林 崇朗
弁理士登録2003年。知財実務25年以上。展示会や販売開始が迫る案件では、公開予定と技術資料を先に整理し、守るべき特徴と出願方法を事業日程に合わせて検討します。
公開・販売前の出願に関するよくある質問
SNSに写真を1枚載せただけでも公開になりますか?
写真から製品の形状や構造上の特徴を理解できる場合は、公開となる可能性があります。フォロワー数や閲覧数が少ないことだけで安全とはいえません。
クラウドファンディングの審査用に資料を提出する段階でも出願が必要ですか?
一般公開前の審査資料が秘密に取り扱われるかを確認する必要があります。ただし、募集ページ公開時には詳細情報が公表されるため、遅くとも公開前の出願完了をおすすめします。
展示会で写真撮影を禁止すれば大丈夫ですか?
撮影禁止だけで公開性がなくなるとは限りません。来場者が製品を見て技術内容を理解できる状態なら、出願前公開が問題になる可能性があります。
取引先1社に見せる場合も公開になりますか?
相手が秘密保持義務を負うか、開示の状況、人数、資料管理などによって判断が変わります。出願前にNDAを締結し、開示範囲を限定することが重要ですが、可能なら説明前に出願してください。
販売後でも1年以内なら必ず出願できますか?
必ずではありません。例外適用の対象となる公開か、必要な手続・証明を満たせるか、第三者の公開や先願がないかなどを確認する必要があります。海外では権利取得できない場合もあります。
製品の一部だけ公開した場合はどうなりますか?
公開した部分と出願する請求項の関係を具体的に比較します。非公開部分に新しい特徴が残っている可能性もありますが、公開済み部分との組合せや進歩性を含めた検討が必要です。
参考となる公的情報
本記事は一般的な情報の提供を目的としています。公開に当たるか、例外適用を受けられるか、海外出願へどのような影響があるかは、公開内容、公開日、相手方、証拠、出願国などによって異なります。
公開予定日が決まったら、出願準備を始めましょう
「展示会まで時間がない」「クラファンに掲載したい」「すでにSNSへ投稿した」という段階でも、公開状況と資料を整理して対応方針を検討します。
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